338杯目:【閉店】富士そば人形町店でニラたぬきそば
※この店舗はすでに閉店しています。
かつて、富士そば「渋谷下田ビル店」に「ネギタそば」という店舗限定メニューがあった。辛味ダレを和えたネギと天かすをハーフ&ハーフで盛りつけており、これを「ネギタ」と略した。
はじめて食べたのは2015年ごろ。目立った工夫があるわけでもなく、感動するような味でもないけれど、私にとって妙に気になる存在だった。
「ネギタ」は一読して料理の内容がわかる略称ではない。それを不親切に受け取る客もいるだろう。しかし、あえて略称を貫くところに開発者のこだわりを感じていた。店を訪れるたびに券売機のネギタを確認して「よし、よし」と心のなかでうなずいていた。ネギタに注がれる店主の愛を確認していたのだ。
ネギタの販売は数年間続いたが、2019年ごろに券売機から忽然と姿を消す。それにともなって、店のメニュー構成もガラりと変わった。店長がべつの店舗に異動になってしまったのだろうか。たまにしか食べないメニューだったが、一抹のさびしさを覚えた。
古いメニューを懐かしんだのは、「人形町店」の「ニラたぬきそば」(500円)を食べたからだ。冷たいそばに豆板醤を和えた揚げ玉と湯通ししたニラがトッピングされた夏季メニュー。品名の響きと類似したコンセプトに、ネギタの面影が重なった。
どうやら、店主の思い入れが強いメニューらしい。券売機には購入を促す導線(矢印)があしらわれていた。「本当は一番目立つボタンに配置したいのに……」。そんな心の声が聞こえてくる。
さらには、カウンター付近に品書きまで設置して猛烈にアピール。カウンター付近に来る客は、すでに食券を買っている可能性が高いのだが、それもお構いなしである。
メニューとしての完成度も高い。彩りがよく食欲をそそられる。冷水でしめたニラはシャキシャキとした歯ごたえ。揚げ玉はピリ辛風味で、豆板醤はややしょっぱめ。辛味パウダーに換えてもいい気がする。
なんにせよ、ニラたぬきへの愛は充分伝わった。いつか「ニラタそば」の略称で提供される日が訪れるかもしれない。期待して待つ。
ちなみに、この店がニラタ並みにプッシュしているのが「いかフライ」(単品160円)だ。身がプリプリと柔らかく、いか天とは異なる味わいがあっておすすめです。
希少性:★★★ インパクト:★★☆ コスパ:★★☆
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