547杯目:松屋銀座「THE CURRY SCRAMBLE」でカレーかつ丼
百貨店とは無縁の人生をおくってきたが、このときばかりはスルーするわけにはいかなかった。なんと松屋銀座で、富士そばの「カレーかつ丼」が提供されるというのだ。
この酔狂な試みは、7月5日から9日にかけて開かれた催事「THE CURRY SCRAMBLE」によるもの。地下食品売り場を舞台に、スパイス料理研究家の一条もんこさんが激推しするカレー店が一堂に会する。ラインナップはスリランカカレー、チキンカレー、キーマカレー、ビリヤニなど。本格派が揃うなか、なぜか紛れこんでいる「カレーかつ丼」に違和感を覚えずにはいられない。「キン肉マン」の超人オリンピックにおけるカニベースのようなネタ枠ということなのか? いや、ちがう。なにを隠そう、一条もんこさんは部類の「カレーかつ丼」好き。その愛の深さは「これ(カレーカツ丼)考えた人神様」と公言するにとどまらず、自身の料理教室で作り方をレクチャーしてしまうほど。「カレーかつ丼」がイベントの大本命といってもなんら差し支えないのだ(イベントフライヤーの表記が「カレーカツ丼」になっているのはご愛嬌)。
「カレーかつ丼」の提供期間は7日、8日の2日間で、1日60食を用意(一杯1404円!)。①15時15食②16時15食③17時15食……といった具合に5コマの提供枠を設ける。苛烈な争奪戦は目に見えているが、単純な早いもの勝ちというわけではない。「カレーかつ丼」にありつくためには、10時から配布される引換券を入手しなくてはならない。確実にゲットするためには、競争率が低い平日の7日を狙うのが妥当。この日は午後から川崎で取材だが、引換券入手→取材→「カレかつ」実食という、エクストリームなスケジュールを決行すればいいだけのこと。
そして迎えた当日。10時過ぎに引換券の配布スペースを訪れると、すでに数人が列を成していた。17時提供分の引換券を難なく入手できたが、そもそも「カレかつ」にどれほどの需要があるのだろうか。
午後の取材を終えたら、すぐさま松屋銀座へ舞い戻る。人ごみをかきわけて「カレかつ」提供ブースに辿り着くと、一条もんこさんがひとり小鍋をふるっていた。なんでも「富士そばさんもワンオペなので、私もワンオペです」とのこと。
こちらが一条もんこ流「カレーかつ丼」。プラ容器が使われていることを除けば、盛りつけは本家を忠実に再現している。カレーソースは、ジャガイモやにんじんがごろごろ。富士そば特製のかつ丼タレを使っているため、全体的に甘みが強い。ところが、食べ進めるとスパイスが本領を発揮。華やかな香りが弾け、辛味がじわりと効いてくる。尖りすぎず、丸すぎず。めちゃくちゃ絶妙なバランスで、万人に愛される味わいに仕上がった。
全体的な印象は「食材を奮発して、自宅で再現したカレーかつ丼」といったところ。一条もんこさんの技術なら、より洗練された味にすることもできたはず。それでも、あえて親しみやすい味にしたのは、富士そばへのリスペクトにほかならない。まさに「才能の無駄づかい」。富士そばマニアのひとりとして、最大級の賛辞をおくりたい。あっぱれ!
希少性:★★★ インパクト:★★★ コスパ:★☆☆
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