2024-08-17

611杯目:富士そば池袋店でクーリッシュ冷したぬきそば

 この10年間、富士そばの「珍そば」をウォッチし続けてきた。インフィニティコロッケそばカルボナーラそばエスカルゴ天そば……いずれも型破りな逸品ばかりだった。しかし、それらはあくまでも序章に過ぎなかった。先日、とうとう富士そばが限界突破。なんと、飲むアイスで知られる「クーリッシュ」とそばを融合させてしまったのである。その名も「クーリッシュ冷やしたぬきそば」(580円)。字面からして嫌な予感しかしない。「クーリッシュ」の製造元であるロッテのプレスリリースには「夢のコラボ!」とあるが、夢は夢でも「悪夢」の方なのではないか。

富士そば池袋店で食べてきた。

 ロッテと富士そばを引き合わせたのは、アイス研究家のシズリーナ荒井氏。プレスリリースのコメントによると「岐阜のソウルフード『冷やしたぬきそば』を食べた時にこのコラボを思いついた」とある。誤解なきように断っておくと、岐阜の「冷やしたぬきそば」とは揚げ玉と油揚げが乗ったそばである(いわゆる「ムジナそば」。決してアイスが乗った珍そばではないので、荒井氏のなかでとんでもない発想の飛躍があったものと思われる。
「クーリッシュそば」は8月1日から31日にかけて池袋店、五反店で先行販売。両店とバトンタッチするかたちで、9月1日から赤坂店が販売を引き継ぐ。いずれの店舗も1日10食しか提供されないので、希少価値はかなり高い。

客自ら十字架を背負う……。

「クーリッシュ冷やしたぬきそば」の罪深いところは、客にアイスを絞らせる点にある。首謀者である富士そばは手を汚すことなく、客を”実行犯”に仕立て上げる。これではまるで、生のレバーと七輪を提供して「よく焼いてくださいね ニコッ」と脱法レバ刺しの存在を暗に示してくる焼肉店ではないか。

 そばに付いてくる「クーリッシュ」は、容量80gのミニサイズ。絞り出す量は客の加減次第なので、そのあたりは良心的といえる。ただ、公式が推奨する食べ方は「オススメは1個をまるまるトッピング!」だ。ならば、珍そばファンの私もそれに応えねばならない。「クーリッシュ」を握りしめ、ムニムニと全力で絞り切った。周囲の視線が私の手元に突き刺さる……。ここは心を無にして、乗り切るしかない。富士そばでこれだけの背徳感を味わうことは、後にも先にもないだろう。

 ただ、強烈なコンセプトに反して、味自体はそれほど悪くない。まず、バニラアイスと油揚げがよく合う。甘辛さが調和して、みたらしバニラといった塩梅。そこに揚げ玉のサクサク食感が加わると、まるでクッキー入りのアイスを食べているかのよう。しかし、残念なことにつゆとアイスのハーモニーは聴こえてこなかった。つゆの塩味が強いため、バニラの個性が埋もれてしまうのだ。バニラをつゆに溶かすのではなく、そばにからめた方がまだ相乗効果が楽しめたかもしれない。
 SNSの反応を見る限りでは、おおむね好評のようである。まあ、珍そばを進んで食べたがるような人は、はなから好意的な態度で望んでいるはずだから、多少ひいき目に評価しているのだろう。先述の通り、1日10食という制限があるのでかなりレアな存在だ。恐らく今回限りのコラボになると思うので、気になる人はぜひいまのうちにチャレンジしてほしい。
希少性:★★★ インパクト:★★★ コスパ:★★★

 

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