629杯目:富士そば渋谷東口店でマー油香るミニスタミナにんにく丼セット&ちくわおくら天
こまねずみのように働く日々がようやく落ち着いた――かと思いきや、今度は確定申告の波が押し寄せ、さらにテレビ番組や週刊誌の取材依頼が舞いこんだ。結局、慌ただしさは変わらない。
遠出する時間もなく、唯一の癒しは近所の富士そば。注文するのは決まって「海老かき揚げそば」である。温そば・冷やしそば・丼ものと、各バリエーションをローテーション。常連客の誰よりも「海老かき揚げ」の売り上げに貢献している自信がある。

しかし、通常メニューばかりではさすがに物足りない。どうしても店舗限定メニューが恋しくなるのだが、目の前にはタスクが山積。本能のままに富士そば巡りに出かけたら、あとで自己嫌悪に陥るのは目に見えている。だからといって、このままじっとしていられるのか。いや、無理だ。仕事に支障をきたさず、なおかつ富士そばを楽しむ方法はないものか……。
そう考えた末、取材帰りにかこつけて、富士そば渋谷東口店に立ち寄った。仕事のついでなら、誰にも文句を言われまい。まあ、自分を納得させるための言い訳に過ぎないのだけれど。

この日の本命は「ちくわおくら天そば」(590円)。SNSで見かけるなり、物珍しさに心を鷲掴みされてしまった。ただでさえ店舗限定のかき揚げは少ないのに、ちくわ×おくらという異色の組み合わせで仕掛けてくるとは。これはもう食べるしかない! そう意気ごんでいた――券売機の前に立つまでは。
目の前の券売機には、思わぬ伏兵が待ち構えていた。「ちくわおくら天」以外に「とろたま塩そば」(700円)と「マー油香るミニスタミナにんにく丼セット」(850円)なる新作が並んでいたのだ。どれもアレンジが効いていて、甲乙つけがたい。てゆうか、渋谷東口店にこれだけの店舗限定メニューが出揃うのは、かなり久しぶりなのではないか。調べてみたら、いずれの3品はダイタンキッチン系列の一部店舗で展開中のようだ。

悩んだ末に「マー油香るミニスタミナにんにく丼セット」を注文し、セットのそばに「ちくわおくら天」をトッピングすることに。
品名に惹かれたものの、マー油を口にするのはこの日がはじめて。豚肉にかかった漆黒のソースがそれで、焦がしニンニクの中華調味料だという。にんにくの風味がほどよく、豚肉、ネギともよく合う。辛味がないから、見た目のインパクトの割に食べやすい。ごはんが半分くらいになったら半熟卵を潰して、ずるずるっといきたい。

「ちくわおくら天」もなかなか印象的であった。カットしたちくわとおくらのかき揚げ。食べ進めるほどにちくわのもちもち感とおくらのぬるぬる感が渾然一体となり、気づけばやみつきになっている。
かき揚げというスタイルはちくわとおくらの持ち味を束ねるだけではなく、おくらの欠点を補う役割も担っている。おくら単体のトッピングだとつゆに沈んでしまい、食べにくくなりがち。しかし、かき揚げならばノーストレスだ。おくらとちくわの一体感を余すことなく堪能できる。ぜひ味わってみてほしい。
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