2024-03-20

587杯目:富士そばふじみ野店でねぎそば

 富士そばのライバルとして、よく引き合いに出される立ち食いそばチェーンがある。都内を主戦場とする小諸そばだ。客単価や商品の開発コンセプトが異なるので、安易に対立軸におけるものではないが、両者はなにかと比較されやすい(あと、ゆで太郎もね)。小諸そばファンのなかには「小諸そばは富士そばと違って、ねぎが入れ放題だ」と、自軍の優位性を示す人も少なくない。たしかに、食事にあまりお金をかけたくない人には魅力的ではある。その点でいうと、ねぎ増量にお金がかかる富士そばはちと分が悪い。

 小諸そばファンにとり、富士そばふじみ野店の「ねぎそば」(550円)はどのように映るのか。その名のとおり、ねぎがたっぷり乗った一品である。ありそうでなかったのは、やはり「ねぎ=無料」というイメージが立ちそばユーザーに根づいているからだろうか。

 今回の新作を見て、すぐに没メニューの「大ねぎそば」を思い浮べた。こちらは「2本分の長ネギをトッピング」が最大の売りだったが、結局陽の目を見ることなくお蔵入りに。「肉富士そば」や「カレーかつ丼」の開発者が考案したそうなので、恐らく10年以上前の話だろう。
 長ねぎ2本分とはいかないまでも「ねぎそば」も同じ系譜にあたる。例え偶然にせよ、長い年月のなかで似たようなコンセプトのそばが生まれ、販売に至る――。小さな川の流れがひとつの大河に収斂されていくようで大変興味深い。

 単にねぎを盛りつけるだけでは芸がないと思ったのか、ふじみ野店は「ごま油」という隠し玉も用意。ねぎとの相性は言わずもがなで、適量を加えるだけで美味さが跳ね上がる。中盤になると、つゆの熱でねぎがしんなりとしてきて、さらに一体感が高まる。
 人気次第では「大ねぎそば」に先祖返りして、ねぎ増し増しもありえるか? その際の品名は「ねぎそば 極み」でお願いします。
希少性:★★★ インパクト:★☆☆ コスパ:★★★

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