613杯目:富士そば渋谷桜ヶ丘店で沖縄そば&オリオンビール
沖縄に帰省した際、必ず立ち寄る店がある。場所は沖縄市の一番街商店街、実家からもほど近い「たこ焼き ちゃんぽん」だ。たこ焼きの店なのか、それともちゃんぽんの店なのか……。ややこしい屋号だが、たこ焼きをメインにカレーライスや焼きめし、甘味などを取り揃える食堂である(ちゃんぽんは置いていない)。どれも異様に安く、壁の短冊はワンコイン以下のメニューが大半を占めている。
この店で食べるのは「ソーキそば」か「三枚肉そば」と決めている。麺は中太でやわらかめ。出汁が染みいるように優しく、尖ったところがまるでない。良くも悪くも想像を超えてこない、めちゃくちゃ抽象度の高い一杯。この力まなさこそ、日常食にふさわしい。沖縄そばに一家言ある県民は多いが、私は自然体で付き合える「たこ焼き ちゃんぽん」の沖縄そばが好きだ。
突然、地元の味覚を語りだしたのは、富士そば渋谷桜ヶ丘店・高円寺店で「沖縄そば」(880円)が販売されたからである。これがまた、私好みの自然体だった。
今回登場した沖縄そばは、いわゆる「三枚肉そば」である。生麺、そばだし、三枚肉、シーサーかまぼこは地元メーカー・サン食品からの仕入れ。サン食品に全乗っかりするのは気がひけたのか、富士そばサイドはわかめ、ねぎ、紅生姜を提供し、コラボ感を演出する。正直なところ、わかめ、ねぎはイレギュラーなトッピングなのだが、それすらも受けれてしまうのが沖縄そばの大らかさだろう。
つゆを口に運ぶと、豚骨と鰹節の風味が広がった。つゆのベースに豚・鰹節を使うのは、地元で定番のレシピである。万人向けにチューニングされており、けっこうあっさり。二日酔いのときに飲んだら、たまらないだろうな。
そばは平打ちで、つるりとした舌ざわり。富士そばの公式サイトには「歯ごたえを持たせた“噛み込む麺”」とあったが、今回は茹で過ぎてしまったのか、かなりやわやわであった。まあ、これはこれで悪くない。
ちなみに、沖縄そばの麺はそば粉不使用で、小麦粉、塩、かん水が主原料となっている。それって中華麺では? と思われがちだが、中華麺とも異なる味わいなので、ぜひ自身の舌で違いを確かめていただきたい。
地元紙の報道によると、沖縄そばは冬まで販売を予定しているそうだ。評判がよければ取り扱い店舗も広がるはず。これをきっかけに沖縄そばファンが一人でも増えてくれれば、県出身者にとってこのうえない喜びである。
希少性:★★★ インパクト:★★★ コスパ:★★★
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