2024-12-15

619杯目:富士そば巣鴨店で師走そば

 最近どうも忙しい。それもこれも師走だからだろう。ただでさえバタバタしている世の中なのに、12月になって時間の流れが加速した。
 師走の語源には、お坊さん(師)が仏事で方々を駆け回るから、という説があるらしい。しかし、この言葉がどれだけ実態を反映しているのかは怪しいところだ。いまや日常生活で仏事や神事を意識することはほとんどない。それでも言葉だけはしぶとく生き残り、我々の生活にしっかり根づいているのだからおもしろい。
 20年くらい前の話になるが、ビッグスクーターで環八を疾走するお坊さんを見かけたことがある。法衣が風を受けて激しくはためき、なんともシュールな光景だった。まるで特撮ドラマのワンシーンのようで、その光景が今でも脳裏に焼きついている。あれもたしか師走のできごとだった気がする。

赤羽店で撮影

 そんな師走の真っ只中、富士そばの一部店舗で「師走そば」(750円)が販売された。師走そば――、富士そばらしからぬ風情を感じさせるネーミングである。桜もちや七草粥、おせち料理などと並んでも違和感がないくらい「行事食」っぽい。トッピングもなかなか豪華で、海老かき揚げ、ほうれん草、しいたけのうま煮が乗っている。富士そばの公式リリースによると、いずれも縁起物の食材だという。季節感を取り入れたコンセプトには好感を覚えるが、券売機の表示はどうにかならなかったのだろうか。ボタンに「師走」とだけ表示されているのは、さすがに謎過ぎる。もう少し説明がほしい。

 どうせなら、趣きのある場所で趣きのあるそばを食べようと思い、巣鴨店に足を運んだ。土曜日のお昼どきだったこともあり、店内はお年寄りたちでにぎわっている。巣鴨店よりも演歌が似合う店舗を、私は知らない。このしっとりした雰囲気が「師走そば」の美味さを一層引き立てるにちがいない。

半分ほど食べて、野菜かき揚げであることに気づく。

 ところが、期待はあっけなく裏切られた。出てきたのは「師走そば」ではなかったのだ。いや、正確には「師走そば」なのだが、海老かき揚げではなく、普通の野菜かき揚げが乗っていたのだ。どうやらスタッフが間違えたようだ。
 こういうミスはイレギュラーなメニューに付きものだ。ましてや海老かき揚げと野菜かき揚げは見た目がよく似ている。師走で忙しいのは富士そばの厨房も同じことだろう。ねちっこい性格をしている私だが、さすがにここは目をつぶることにした。来年の暮れにリベンジしなくては。
 

こちらが海老かき揚げ。海老3つがデフォ。
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