コラム3:富士そばを取り巻く2種類のそばとは!? その謎を探るべく我々は店内奥へ足を踏み入れた
東京都をはじめ神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県で約120店舗を構える富士そば。ダイタンホールディングスを母体に、ダイタン企画、ダイタンイート、ダイタンマルシェなどの子会社が運営を分担しています。担当するのは、一社につき10店舗ほど。独立採算制を採用しているため、同じ「富士そば」のブランドを背負いながらも、各社はライバル関係にあり、それぞれが工夫を凝らして切磋琢磨しています。
同じような理由でほぼすべての食材を二社から仕入れています。例えば、つゆのかえしに使う削り節は阿部鰹節と小林食品から。麺は興和物産と紀州屋製麺のものを使用。二社を競わせて仕入れ価格を保つことが当初の狙いだったそうです。現在はリスクヘッジの側面が大きく、一方の仕入れ先がトラブルに見舞われても供給がストップしないように、との狙いがあります。
つゆと麺は、いわば店の「看板」ですから、質に差が出ないように同等品の食材を仕入れています。真っ当なチェーン店の顔を垣間見るような、富士そばらしからぬこだわりです。え? 「店によってつゆの味が違うだろ!」ですって? その言い分もごもっとも。しかし、つゆの味はつくり手(オペレーション)に依存している場合が多いため、食材はほとんど影響していないと筆者は考えています。
一方の麺は、比較的仕入れ先の違いがわかりやすい。ポイントは麺の断面。興和物産は角のとれた正方形をしています。対する紀州屋製麺は断面がエッジのきいた扁平をしています。さあ、下の画像で見比べてみましょう。
写真で比較するとわずかながらの差異に気づきます(※色味の違いは撮影環境によるものです)。
見た目以上に口に運んだときに違いが現われます。興和物産はもそもそとしていて食べごたえがあり、紀州屋製麺はシャープな食感。筆者は喉ごしのいい後者が好みです。
各店舗がどこの製麺業者を利用しているのかは、とくに公開されているわけではありません。知りたければ独自で調査する必要があります。筆者は、店と一定の距離を置いてお付き合いしたいので店主に直接聞くようなことはしません。まずは、自身の目と舌で判断することになるわけですが、それも確実な確認方法とは言い難い。答えに迷ったときは店を見渡して「麺箱」を探します。
麺箱(麺コンテナーとも)とは、納品時にそばが入っている容器のこと。興和物産・紀州屋製麺ともに、同じようなピンク色の容器を使っていますが、側面をチェックすればその違いは一目瞭然! 前者は「興和物産」と印字され、後者は「ダイタングループ」「名代 富士そば」と印字されているのです。店頭や厨房に麺箱が積み上げられていたら、しめたもの。すかさずチェックして麺を見極めます。
これらの確認方法をふまえたうえでの調査結果が下記の一覧です。
■興和物産から仕入れている店舗
日暮里店、明治通り店、西武新宿店、高田馬場駅前、昭和通り店、水道橋店、品川店、三田店、御徒町駅前店、大塚駅前店、池袋東口店、荻窪北口店、三軒茶屋店、五反田店、大井町店、武蔵小山店、板橋店、京急蒲田店、蒲田店、金町店、新小岩南口店、赤羽店、八王子店、秋津店、国分寺店、みずほ台店、川越店、浦和中町店、北浦和店、大宮東口店、日ノ出町店、綱島店
■紀州屋製麺から仕入れている店舗
渋谷下田ビル店、道玄坂店、代々木店、笹塚店、新宿店、新宿都庁店、新宿三光町店、小滝橋店、市ヶ谷店、市ヶ谷五番町店、お茶の水店、赤坂見附店、新橋駅前店、上野店、しのばず店、駒込店、阿佐ヶ谷店、荻窪店、高円寺店、下北沢店、大井町駅前店、田端店、王子店、北千住東口店、自由が丘店、浦安店、川崎東口店、元住吉店
全店把握には遠く及びませんが、富士そばに立ち寄った際の参考にしてください。冷たいそばで食べると両社の違いがより際立ちますよ。食べるだけで判別できるようになれば、あなたも”富士そばマニア”の仲間入り。
なお、一部の店舗だけで取り扱っている「乱切りそば」については、また別の機会に取り上げます。
▼過去のコラムはこちら
コラム1:富士そばを1500杯食べ続けて考えた「おすすめのメニュー」のこと
コラム2:同じデザインは2つとない⁉︎ 富士そば看板あれやこれや
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