375杯目:富士そば代々木八幡店で海鮮火鍋そば
今年は富士そばにまつわる事件の多い年だった。北海道出店、ガチャガチャ販売、コロナ危機による閉店続出……と、ネガティブなニュースからポジティブなネタまで様々な話題を提供するあたりはさすが富士そばといったところ。
なかでも印象深い出来事が「海鮮火鍋そば」(590円)の販売である。ことの発端は、富士そばマニアで構成される「富士そば友の会」が企画した「理想の富士そばコンテスト」だ。会員から十品のメニュー案を募り、SNS上でアンケートを実施。141票中およそ過半数を得票した、このメニューが見事販売に至った。企画というかたちでマニア考案のメニューが販売されるのは初めてのことである。
販売店舗は、代々木八幡店が買って出た。今年、新店長に代わって以降「トマトスープの洋風海鮮そば」や「酸辣かき玉そば」など、攻めたメニューが目立つ気鋭の店舗である。
注文すると店員から「つゆを温めるので4分ほどお待ちください」と丁寧な対応を受ける。声の張りや無駄のない所作から察するに店長だろう。
「火鍋」というだけあって、つゆは赤みが強い。見るからに辛そうだが、スパイスの刺激的な香りの奥に確かな魚介の香りを感じる。辛さと旨みのバランスが絶妙。ラー油「ラオガンマー」のコクがあとをひき、普段はつゆを飲み干さない私もついレンゲが止まらなくなる。富士そばマニア・友之助氏の取材動画によると、ハマグリの出汁が凝縮されているそうだ。
具沢山なのも嬉しい。エビ、イカ、あさり、ニラなど個性の別れるトッピングがそばを飾る。ひとつ要望を挙げるならば、あさりの貝殻を捨てる小皿が欲しい。
追加トッピングも多彩だ。「豚肉増し」(160円)、「きつね増し」(100円)、ちくわ(100円)など、6種類を提案する。
私は最も変わりダネと思われる「粉チーズ」を注文。恐る恐るつゆにかけてみると、これが魚介出汁とよく合う。どっしりとした発酵系の旨味が加わり、より奥行きのある味わいに。
マニアの夢を実現させんがために、店長が情熱を注ぎ矜持を込めた一杯である。
希少性:★★★ インパクト:★★★ コスパ:★★☆
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