2023-11-11

567杯目:富士そば王子店でカニカマ天そば

 ハンバーグ専門店のなかには、やたらと「手ごね」をアピールする店がある。ウッディな看板には「手ごねはんばぁぐの店」と大書き。内装は決まって、バンガロー風である。
 けど、ハンバーグの味は悪くなかったりする。というか、ふつうに美味かったりする。「なにせ、うちは手ごねですから」。店主の得意げな顔が浮かんでくる。
 ただし「手ごね」をよしとするかどうかは、意見が分かれているようだ。「手のひらの常在菌がハンバーグを上手くする」といった意見(素手でにぎったおにぎりが美味いのと同じ理屈)もあれば「手のひらの温度で脂が溶けてしまいジューシーさが失われる」といった意見もある。「手ごね」には科学で証明できないナニかがある。
 食べる方からすれば、とりあえず「ありがたみ」は増す。あぁ、手間かけてくれてんだ、という気持ちになる。

 富士そば王子店の「カニカマ天そば」(550円)も、それと近いありがたみを感じる。店頭の立て看板には「魚介の旨味たっぷりの手ほぐしカニカマ天」とある。手ほぐし……常在菌が効いていそうな響きに喉が鳴る。

 王子店のカニカマ天は、通常のかき揚げよりもやや小ぶり。紅白の彩りが目に鮮やかだ。以前、駒込店で「枝豆とカニかまのかき揚げ」を食べたが、それはぶつ切りのカニカマが使われていた。

 一方、王子店のカニカマ天は高密度で、繊維がぎゅっと詰まっている。ニットでいうなら、間違いなくハイゲージ。玉ねぎや人参などでかさ増ししない潔さ。純度100%の“ホンモノ”のカニカマ天だ。
 噛みしめると、カニカマのうま味がジュワっと広がった。それよりなにより、繊維質なモジャモジャ食感がクセになる。これはほぐし身ならではの醍醐味だ。
 温かいそばだと、つゆでカニカマ天がほぐれやすくなるが、うま味もつゆに溶けてしまう。うま味を重視したい人は冷たいそばにトッピングしたほうがよさそうだ。
希少性:★★★  インパクト:★★☆ コスパ:★★★

 

 

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