2024-12-30

621杯目:富士そば秋葉原電気街店で大きなカニカマ天そば

 富士そば秋葉原電気街店の「デラックスメニュー」が登場して1年が経つ。価格もトッピングも贅沢なこのシリーズは、多くの人にとってトリッキーな試みに映ったことだろう。しかし、ここ最近はすっかり板についてきた。「デラックス贅沢天丼」や「極 かつとじラーメン」などの開き直ったメニューが奏功して、他店舗ともうまく差別化できている。SNSでは「富士そばもここまで値上がりしたのか!?」といった驚きの声も散見され、賛否ひっくるめて店の個性として定着しつつあるようだ。

 デラックスメニューが秋葉原電気街店の醍醐味であることは重々承知している。けれども今回はあえて、比較的リーズナブルな「大きなカニカマ天そば」(770円)を選んだ。豪華な一品の影に隠れて、ひっそりと存在する「大きなカニカマ天そば」になんともいえない哀愁と魅力を感じたからだ。
 そもそも富士そばにとり、カニカマは特別な食材だ。基本的に「特選富士そば」にしか用いられず、店舗限定メニューに登場することは滅多にない。その暗黙のルールを破ったのが、かつて王子店で提供された「カニカマ天そば」で、あれは異例中の異例であった。

温かいそばでも注文できる

 そんなカニカマが「大きなカニカマ天そば」で再び主役に躍り出た。これはもう驚きを超えて、感動の域である。「贅沢天丼」のカニカマを流用していることは明らかだ。しかし、そこは大きな問題じゃない。重要なのは、カニカマが主役に選ばれたという事実である。

「大きなカニカマ天」は、長さ14センチ、直径2センチもあり結構迫力がある。かぶりつくとカニっぽい風味が広がり、繊維の束感がリアルさを演出する。サイズが大きくなってもカニカマはカニカマ。どう転んでもホンモノのカニにはなりきれないが、そのおいしさは疑いようがない(清水ミチコのモノマネ芸的な)。
 実をいうと、もう一本追加(単品350円)しようかとも思った。二本の方がきっと絵的に立派だし、満足感も倍増しそうだ。けれども、それは野暮な気がしてやめた。贅沢さを求めるなら、最初からデラックスメニューを頼めばいい。「大きなカニカマ天そば」の素朴な味わいをそのまま楽しむからこそ、心にしみるのだ。

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