2025-01-23

622杯目:富士そば吉祥寺店で甘辛 鶏玉子とじそば

 昨年末から続いていた複数の案件がようやく一段落した。少し身軽になったところで、いよいよ富士そば巡りも本格始動。新年最初の更新となれば、やはり「珍そば」を取り上げなくてはならない。どこの店舗にもあるような平凡なそばでは、富士そばライター(自称)の名が廃る。

 そこで選んだのが、吉祥寺店の「甘辛 鶏玉子とじそば」(670円)。「うま辛」系のそばは数多く見てきたが「甘辛」を謳うそばはなかなか珍しい。そばの上に親子丼の頭(鶏肉の玉子とじ)が盛られ、真っ赤なスープがたっぷりと注がれている。はて、「辛」に全振りしたかのようなビジュアルなのに「甘辛い」とはこれいかに。

 ネギをよけてみると、そこには豆板醤が潜んでいた。まるで石の下に棲むダンゴムシのようである。辛い料理があまり得意ではない身としては少々不安がよぎる。それでも意を決してスープを一口。すると、豆板醤の辛さのあとに甘さがじわりと広がった。甘さが辛さを打ち消すというよりは、個性と個性のぶつかり合い。まさしく、両者がっぷりよつの「甘辛」である。
 甘さの正体は、親子丼の頭から染み出た「丼タレ」にある。かつ丼の頭にも使われているこのタレの甘さが豆板醤の辛さと絶妙に拮抗しているのだ。「ピリ辛 親子南蛮そば」という品名であれば、すぐに味の想像がついただろう(実際に親子南蛮そばは存在する)。あえて「甘辛 鶏玉子とじそば」と名付けたのは、開発者のこだわりだろうか。深い意味はないのだろうが、マニアにとっては嬉しい仕掛けだ。新年早々、ネーミングの妙にすっかりやられてしまった。

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