566杯目:富士そばでそば屋の坦坦そば
11月1日より、富士そばほぼ全店で秋のタペストリメニューの提供がはじまった。目玉は「そば屋の坦坦そば」(600円)。まがうかたない、珍そばである。もともと、ふじみ野店の元店長が考案した試作品で、今回晴れて正式採用されたかたちだ。タペストリメニューで新作そばがお披露目されるのは、2022年11月の「徳島特製かき揚げそば」以来だろうか。
店頭POPを見ると、品名の下に「味ではなく、売り方が起源。」。謎の文言に惹きつけられる。富士そばの主張を要約すると「本来『坦坦麺』という言葉の由来は、担いで売り歩くスタイルからきたものである。ゆえに特定の味を指す言葉ではない」。つまり、今回の「坦坦そば」はみんなが思い描いている担々麺の正調アレンジではないからよろしくね、ということらしい。先に逃げ道をつくっておくあたりが、なんとも富士そばらしい。それにしてもだ、まさかPOPにデカデカと但し書きを載せてしまうとは。
とはいうものの「坦坦そば」も本家のエッセンスを多分に含んでいる。さすがに坦坦麺の直系とはいかないが、そうだな、親戚宅の居候くらいの関係性はある。
例えば、トッピングのひき肉。担担麺に使われるひき肉のように甘辛く味つけされている。しっかり味が染みこんでいて、ごはんに乗せてもよさそう。
スパイシーな香りを放つつゆも情感たっぷり。通常のつゆに辛味調味料がミックスされており、担々麺のスープに少し寄せている。ひき肉の甘みとつゆの辛さのコントラストによって、奥行きのある味に仕上がっている。
ほうれん草や白髪ねぎのトッピングもワカッテマスネ。担担麺の雰囲気を演出する“記号”になっている。まだ二回しか食べていないが、白髪ねぎに花椒をかけてくれる店舗もあった。
うどんでも試してみたが、これも悪くない。温玉やゆで卵を入れてみてもいいと思う。
たしかに担担麺のそばアレンジとは言いがたい。けれども、そばの新しいアプローチとして見るなら話は別。今後、秋冬の定番になってもおかしくないクオリティだった。
希少性:★☆☆ インパクト:★★☆ コスパ:★★☆
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