656杯目:富士そば 7月のフェアメニュー「ミニ四川風かき揚げ丼セット」
富士そばの「かき揚げ丼」は、すでに完成された食べ物だと思っていた。タレで煮こんだ野菜かき揚げをごはんに乗せた、立ち食いそばらしい一杯。紅生姜天やげそ天を使うことはあっても、結局は「かき揚げ丼」という枠組みを大きく超えることはない。いわば、永遠のマスターピース。これ以上、進化の余地はない――そう思っていた。

「かき揚げ丼」の新たな地平を切り拓いたのが、7月のタペストリーメニュー「ミニ四川風かき揚げ丼」だ。「名代 塩そば」キャンペーンの一環として「塩そば」とのセットで790円。そばもミニ丼もアレンジメニューという、なかなか異色の組み合わせである。

「ミニ四川風かき揚げ丼」は、一見すると大根おろしを乗せたかき揚げ丼にしか見えない。しかし、よく観察すると大根おろしには花山椒が散りばめられている。ひと口運ぶと、刺激的な辛さがぶわっと広がった。かき揚げ丼用のタレに豆板醤を合わせているそうで、発酵由来の香りとコクが食欲をさらに加速させる。
一方で、大根おろしの甘みが辛さをほどよく和らげ、花山椒のしびれが全体を引き締める。まるで「四川風」と「和風」を反復横跳びするように、味わいが目まぐるしく入れ替わる。

正直なところ、食べるまではあまり期待していなかった。アイデア先行のメニューで、味は二の次だろうと思っていた。ところが実際は、出オチどころか思わず膝を打つ完成度。開発担当者もこのアレンジを発見したときは、脳汁ドバドバだったにちがいない。
かき揚げ丼には、まだまだ可能性が残っていた。これをきっかけに、洋風やエスニック風など、新たなバリエーションが広がっていくかもしれない。













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