657杯目:富士そば西荻窪店で真夏のミートソースそば
自炊するようになって20年以上経つが、いちばん創意工夫していたのは学生時代だった気がする。外食できるほど金銭的な余裕がなく、おのずと自炊が多くなる。とはいえ食費は限られており、献立は清貧そのものだった。食パンにレトルトカレーをつけて食べたり、ごはんに醤油とマヨネーズ(たまにコショウも)をかけて食べたりと、なんとかお金をかけずにカロリーを確保しようとしていた。今にして思えば『OH!MYコンブ』のリトルグルメさながらである。

その頃の記憶を不意に呼び戻したのが、富士そば西荻窪店の「真夏のミートソースそば」(690円)だった。ネーミングからしてイヤな予感しかしないが、そのものずばりで冷たいそばにミートソースをかけた一品である。つゆは入っておらず、基本的な構成はミートソーススパゲティと変わらない。薬味の「具入りラー油」はもはや中華料理の領域なのだが、この“場外乱闘”みたいな粗さが学生時代を思い出させる。

品名にある「真夏の」とは、おそらく具入りラー油から連想されたものだろう。辛味調味料=発汗=真夏という、無理やりひねくり出した季節感。西荻窪店は「春の豚つけそば」を開発したダイタン企画が運営する店舗なので、深く考える必要はない。

ミートソースはほどよく粘度があり、甘めの味つけ。一応、ひき肉も入っている。そばといっしょに食べてみたら、意外と違和感がなくて驚いた。そう思わせるのは、中太そばの口あたりとつるりとした食感がスパゲティに近いからだろう。ミートソースをたっぷり絡めたら、麺の違いはどうでもよくなってくる。ラー油の投入も躊躇なし。気づけば、この奇妙な一皿に引きこまれていた。












