2024-01-12

575杯目:富士そば品川店でコロ玉カレーそば(ゆで太郎コラボ)

 2024年の「珍そば」初めは、品川店の「コロ玉カレーそば」(820円)だった。新年早々、新作の提供とは景気がいい。販売のきっかけは、昨年末に放送されたテレビ番組「同業者ほめ愛カンパニー」(テレビ東京)だ。競合関係にある企業同士で褒め合うという謎の番組で、富士そばとゆで太郎から代表者が出演。お互いの店を視察して、独自メニューや厨房のオペレーションを讃えあった。
 見どころは、なんといってもオリジナルそばをプレゼンし合う場面だ。富士そば赤坂店のパク店長がゆで太郎の社長に「韓国風油そば」を提案。なかなか好評だったが「日常食にならない」(意訳)との理由で採用には至らず。たしかに、ゆで太郎で出すにはわんぱくが過ぎる。
 対するゆで太郎は、「かつとじカレーそば」を提案。競合に忖度した「珍そば」だったが、なんと富士そば勢はこれを却下。「合わない」「練りこみ不足」(意訳)と、評価も辛め。いやいやいやいや、あんたら普段もっと変なそばを作ってるだろ! 小平店にあった「かつとじそば」と大差ないだろ! なんとなく、よそ行きの富士そば勢に思わずつっこんでしまった。きっと、珍そばメイカーなりの信念や矜持があるのだろうな。
 かたや日常食、かたや珍そば。方向性の違いがよく表れていて、大変興味深かった。

 最終的に「かつとじカレーそば」は「コロ玉カレーそば」(820円)にアレンジされ、晴れて両者の合作が完成した。とんかつをコロッケに差し替えただけで、グっと富士そばらしくなるから不思議。ネーミングの親しみやすさも富士そば勢に分がありそうだ。
 「層」で考えると、富士そば勢の工夫がよくわかる。下からそば、カレーつゆ、玉子、コロッケの4層構造。つまり、コロッケが玉子でとじられていないのである。いったい、どのような狙いがあるのか? これは恐らく、コロッケがつゆで溶けていく過程を楽しんでほしかったからではないか。いうまでもなく 「コロッケそば」の醍醐味は、つゆでふやけたコロッケである。コロッケをつゆに沈めておいて、いい感じに“育った”ところで、かぶりつく。これがたのしい。
 しかし、コロッケを玉子でとじてしまうとジュクジュクになってしまい、“育てる”プロセスが丸ごと消し飛んでしまう。ならば、コロッケはそのまま乗せてしまおう、というわけである。さすが富士そば、「コロッケそばを広めようの会」を運営しているだけあって、コロッケそばの何たるかを心得ている。
 カレーつゆとコロッケの相性はいわずもがな。玉子とじの甘いタレともなじんでおり、意外と一体感がある。奇抜すぎるわけでもないので、万人に受け入れられそう。
 提供期間は1月末まで。ゆで太郎と富士そばが力を合わせた記念すべき一杯なので、多くの人に楽しんでもらいたい。
希少性:★★★ インパクト:★★☆ コスパ:★★☆
 
 
 

 

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